HOME翻訳者の仕事 千里の道も一歩から 第31回

たけもと・ひろこ
熊本県出身。大学卒業後、会社勤めを経て95年に東北新社映像テクノアカデミア入学。卒業後、フリーの映像翻訳者に。主な作品『ホミサイド/殺人捜査課』『スピン・シティ』『エバーウッド 遥かなるコロラド』『新ビバリーヒルズ青春白書』(いずれもドラマ)。趣味はサッカー観戦。
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竹本浩子
偶然見つけたスクールの
広告が運命を変えた


映像翻訳学校の1期生として入学

 海外ドラマの大ファンだった私にとって、字幕・吹替翻訳は憧れの仕事でした。大学では英文学を学び、翻訳学校の通信教育などは受けてみたものの、どうやれば映像翻訳の仕事に就けるのかも分からず、「職業にするのは無理」と諦め、映像や翻訳とは何の関係もないシステム関係の会社に就職しました。しかし、どうやら自分には不向きな仕事だったようで、3年目にして挫折。退社を考え始めた頃に、雑誌で見かけたのが「東北新社 映像テクノアカデミア」の広告でした。
  海外ドラマ好きなら必ず知っている制作会社の大手、東北新社。この学校へ行けば扉が開けるかもしれないとワラ(と言っては失礼ですが)にもすがる思いで入学試験を受験。運よく合格し、その通知が届いたのは奇しくも会社を辞めたその日でした。それから2年間、週2回授業に通い、OJTとしてちょっとした仕事を請けながら勉強を続け、卒業と同時にいただいた最初の仕事がベネズエラの連続ドラマでした。オリジナル言語がスペイン語という難しさはありましたが、ラテン系は好きでしたので、楽しい初仕事でもありました。

学校の紹介で チャンスを掴む

 映像テクノアカデミアに通い始めて最初の夏休み。事務局から「仕事をしないか」との連絡をもらいました。新しく始まる海外ドラマシリーズ日本語版制作の手伝いで、翻訳の勉強を始めたばかりの者にとってはとても興味深く、また当時無職だった私にはありがたい話でした。軽いアルバイト程度の気持ちで始めたのですが、予想に反し、なんと10年以上も続く長寿番組に。医療ドラマとしてヒットした『ER緊急救命室』です。
  私の役目は主に、医学監修の先生から適切な用語などを教えていただき、それを翻訳の木原たけし先生へ伝えること、そして収録時に医学用語を間違えないようチェックすることでした。当然、医学用語に関する知識はゼロだったので、最初の数年は分からないこと、覚えなければならないことだらけで大変だったのを覚えています。
  しかし仕事という名の下で、業界の大ベテランである木原先生の翻訳をじっくり見られる機会に恵まれたわけで、これは幸運以外の何物でもありません。おまけに医学用語も勉強でき、素晴らしい声優さんたちのアフレコ現場に生で立ち会うこともでき、一石二鳥どころか、三鳥、四鳥といったところです。10年以上も続き、すっかり日常化していたこの仕事が昨年末に終わった時は、何とも言いがたい寂しさに襲われました。ですが、この得がたい経験を無駄にせず、自分の仕事に生かして、良い翻訳をしていかなければと肝に銘じました。
  それと並行して、もちろん自分の担当する作品の翻訳もやっていました。本格的に翻訳を始めて13年ほどになりますが、そのほとんどがドラマの吹替翻訳でした。私が映像テクノアカデミアを卒業した頃はちょうどCS放送が広まり始めた頃で、翻訳需要がそれ以前よりも増えたせいか、私のような新人にそれなりに仕事が回ってきたのです。
  また、映像テクノアカデミアの開校と同時に入学して一期生となったことで、それだけチャンスも多かったのかもしれません。色んな意味で、とてもラッキーなスタートを切れたと言えるでしょう。ちょうど退社を考えていた時に、学校の募集広告に出会えたことが、まさに運命のように思えます。もし広告を見逃していたら、今の私は決して存在していません。思い切って会社を辞め、翻訳の世界に飛び込むきっかけをくれたのです。
  当初はCSの作品がほとんどでしたが、数年前からは地上波で放送されるような作品も担当させていただくようになり、田舎の親などは番組の最後に名前が出るだけで喜んでくれています。これも一種の親孝行でしょうか。

次の一歩
赤池ひろみさん

(あかいけ・ひろみ) 映像翻訳者。映像テクノアカデミア翻訳科の一期生。海外ドラマとドキュメンタリー、両方の翻訳を手がける。