HOME通訳ガイド行脚・春夏秋冬



通訳ガイド・通訳者

ランデル洋子(Yoko H. Randell, Ph.D)

名古屋出身。南山大学卒業。在学中に北イリノイ大学に留学。YMCA英語学校講師の後、上京してフリーの通訳・翻訳、通訳ガイド、海外旅行添乗員、海外駐在員などをこなす。1980年バイリンガル人材の派遣会社を設立して、92年まで代表取締役。結婚を機にフリーにもどり、通訳・通訳ガイド他の現場の仕事を再開。執筆、講演、研修など幅広く活躍。特定非営利活動法人(NPO法人)GICSS(通訳ガイド&コミュニケーションスキル http://www.gicss.org)研究会理事長。通訳ガイド実務研修の第一人者。サミット会議など国際イベント関連の人材育成研修の講師でもある。著書に『英語の仕事で輝きたい』『英語を使ってボランティアしたい』(以上、ダイヤモンド社)、『電話の英会話110番』(旺文社)、『国際電話の英会話』(三修社)ほか。


第54回  ガイドスキルを磨くボランティア体験


無料ガイドデーでの活躍

通訳案内士の国家資格を取得した後も、ボランティアで外国人観光客にガイドをする場合があります。ボランティア組織に所属して活動する人もいますが、そうでないケースとしては、たとえばここ数年にわたり、2月にガイド組織単位で実施される“無料ガイドデー”での活動などがあります。これは観光庁のビジット・ジャパン・キャンペーンの一環として、無料で外国人観光客に通訳ガイドサービスを体験してもらい、通訳ガイドを利用するメリットを知り、認知度を高めてもらおうという趣旨の企画です。東京では明治神宮や浅草寺、京都では二条城と金閣寺の4ヶ所で開催されることが多いです。(事前にそれぞれの場所の管轄担当者から許可を得て実施するものです。)そして実は、これは新人がガイドの場数を踏んで技術を磨くことのできる貴重な機会ともなるので、秘かな人気イベントとなっています。

 


警戒心を抱かせない声のかけ方のコツ

各観光地の一定の場所に待機し、外国人客を見かけると
「今日は無料ガイドデーです。ライセンスガイドのサービスを受けませんか?」と話しかけてゆきます。
突然のアプローチに、ほとんどの外国人は最初は警戒心を見せます。そこで怪しい者ではありませんよ、というアピールのために全員がお揃いのウインドブレーカーを身につける、無料ガイドデー用のチラシや旗を用意するなどの知恵を駆使するとかなり効果がでました。声をかけて断られると、最初のうちはほとんどのガイドさんがかなり気分がめげてしまうものです。が、そのうちに3組に1組は成約?するようになります。

この声のかけ方にも実はコツがあるのです。
“Hello, I am a government licensed tour guide. We are offering free guide service today. Can I guide this place for you?”
では、“No. Thank you.” とお返事されてしまいがち。

知らない相手に近づく場合には、主目的の話をする前に、まずは相手の気持ちになって言葉をかけてみましょう。Small talkです。
“Hello, are you enjoying your trip?”などと自然に会話がしやすい空気を作ります。そして自己紹介です。
“I am a member of professional guide team offering free guide service today. It’s a special program by the government to promote better understanding of Japan and our guide services. We’d like you to make the most of your visit.”
「無料です、日本への理解と通訳ガイドに対する理解を深めてもらうため、そして何よりもせっかくの観光を十分に楽しんでいただきたい」
と趣旨を明確に伝えて、安全であることを理解してもらうと打ち解けやすく、逆に何て今日はラッキーなんでしょう!と喜んでもらえることが多いようです。
“We are ready to show you around this site in the most effective way and I’d be very happy if you let me help you.”
「日本と観光ガイドに対する理解を深めてもらうためのプログラムなので、協力いただけると嬉しいです」ぐらいが最大限のプッシュでしょうか。でも観光客の反応がちょっと躊躇気味だったら
“If you would like our assistance, please feel free to ask us.”
と、完全に選択権を委ねて距離を置くことが良いでしょう。

 


自己訓練の蓄積が物をいう

いざ、OKとなると、お客様の期待を裏切ってはいけないとガイドは一生懸命に頑張らなければなりません。それが良い訓練になるのです。ボランティアだからいい加減なガイドでもいいや!という考え方はダメ。いつもベストを尽くします。
成功の秘訣はとにかく相手の立場や気持ちを考えること、相手の興味は何にあるか?を見抜いてゆくことです。現場の説明をしながら、それまで訪れた他の観光地の話題や日本滞在中のこと、そして日本人の生活や文化全般に渡って会話をつないでゆくと、ガイドブックを読むだけでは得られない情報や体験ができるので親近感が増してゆきます。次にゆく訪問地や食事の相談なども受けたら万歳です。短時間の出会いでも信頼を受け、「ガイドしてもらい、一緒に時間を過ごせて嬉しかった」と、感じてもらえるのはガイド冥利ですね。

 

今はベテラン、人気ガイドとしてひっぱりだこの通訳ガイドTさん。彼女は新人のころ、地元奈良の東大寺の参道で「待ち伏せガイド」として週に一度程度自己訓練をしていたことがあるそうです。彼女がどんな相手にもうまくガイドができるのは、様々な観光客にアプローチした体験の蓄積が物をいっているのではないかなあと思うことがあります。

 

ボランティアでガイドを試みるやり方については、各地のボランティアガイド組織がノウハウを豊富に持っておられることと思います。個人で行うよりも組織を通じての活動が効果的でしょう。プロとボランティアの住み分けも意識したうえで、全国にガイドできる人が増え、外国人観光客がより楽しみやすくなる環境ができるといいと思います。