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  ■講師 山本ゆうじ

言語・翻訳コンサルタント。国際学校UWCイギリス校で学び、筑波大学を経て、シカゴ大学人文学修士号を取得。帰国後、フリーランスの実務翻訳者として独立。緻密な合理化ワークフローにより、実務翻訳業務、また大規模翻訳・文書管理/作成の講習やコンサルティングを行う。近著にグローバル・スタンダードの教育を紹介し、日本の教育を問い直す『世界に通じる学校・国際学校UWCの異文化理解教育』など。現在、『通訳・翻訳ジャーナル』に、翻訳者を対象としたツール使いこなしについての「デジタル翻訳者の道具箱」を連載中。
「秋桜舎」のウェブサイトは、http://transpc.cosmoshouse.com/
ブログも開設中。http://cosmoshouse.air-nifty.com/


第7回 翻訳ソフト活用の基本


明快かつ簡潔に

拙作の怪談掌編「蚊帳の外」が収録された、『てのひら怪談2』がポプラ社から刊行されました。 てのひら怪談―ビーケーワン怪談大賞傑作選 (2)

「蚊帳の外」―「万年助教授の『僕』が土佐の山村で出会う『怪』!」
「蚊帳の外」―「万年助教授の『僕』が土佐の山村で出会う『怪』!」


三百字から二千字程度で書く掌編は、推敲を重ねて語彙や表現を磨く訓練としてももちろんですが、「明快かつ簡潔に書く」訓練としては最適です。もっとも文学的な妙味というものは、あまり「明快かつ簡潔」だと失われてしまうのでバランスが難しいところです。実務翻訳については、「明快かつ簡潔」に徹すべきでしょう。

 

翻訳者にとっての翻訳ソフトの活用

図 1 翻訳ソフトでの作業例
図 1 翻訳ソフトでの作業例


さて、皆さんに送っていただいたアンケートの結果から、「翻訳ソフトの活用」についての関心が高いことが分かりました(図1)。私がコーディネーターを務めさせていただいた先日のJTF翻訳祭パネル ディスカッションのテーマも、「ツール活用で品質と効率の向上を両立する」〜MT/TMワークフローの現状と未来〜というものでした(ディスカッションを収録したDVDが発売されました)。しかし、翻訳ソフト(機械翻訳・MT)については、いまだに根強い偏見があります。「翻訳ソフト任せにして日本語は大丈夫なのか」と懸念されている方もいます。その懸念はごもっともです。冒頭に拙作を持ち出したのも、「翻訳ソフトを活用している人間でも、日本語文章の評価が低いわけではない」ということを示したかったわけです。

実務翻訳は創作活動ではありません。実務翻訳を個性の表現の場とするのではなく、創作活動は創作活動で思いっきりすればよいと私は考えています。また翻訳ソフトは、翻訳表現の幅を狭めるものではありません。むしろ、豊富な用語集(訳語集)をユーザー辞書として共有・再利用することで、多彩な翻訳表現ができるようになります。

最近は、個人翻訳者でも翻訳ソフトを活用されている方が少しずつ増えているようです。また積極的に導入を考えている企業も増えています。しかし、翻訳ソフトを活用するには、意外にも周到な準備と高度な技量が必要です。

 

ふだんと違う頭の場所

翻訳祭パネル ディスカッションでパネリストを務めていただいたIBMの脇田様は、翻訳ソフトを試験的に導入した際の翻訳者の話として、「翻訳ソフトを使うときは、ふだんと違う頭の場所を使っているようだ」という感想を紹介されていました。大変面白い表現だと思います。翻訳者が翻訳ソフトで直接作業する場合には、原文を読み、頭の中で訳してから、翻訳ソフトの訳と比較します。「読んで頭の中で訳す」というのは、通訳でいうサイト トランスレーション(サイトラ)と同じです。ふだん文法を意識せずに感覚的に訳している人も、翻訳ソフトで直接作業する場合には、翻訳ソフトが訳せたか確認するために、文法を意識せざるをえません。しかし、このことで、思いこみや訳抜けを防ぎ、より正確な翻訳にできるという利点もあります。

翻訳ソフトについては、いくつもの企業が独力で活用を試みるものの、「管理者や作業者が工程に慣れきっていないうちにあきらめてしまう」ということがよくあるようです。現在の翻訳ソフトは、事前に調整が必要で、これまでとは作業方法も異なるため、「単純に楽をする」という目的のためだけには使えません。また部分的には飛躍的な効果を上げることもありますが、準備の手間も考えると、2倍の効率を簡単に実現できるわけでもありません。しかし、全体の工程で比較すると、手作業よりは確実に違いがあります。説得力のある実例を、今後ご紹介してゆければと思います。

翻訳ソフトについて、より詳しく知りたい方はこちらのページをご覧ください。よくある疑問や誤解などをまとめています。
http://transpc.cosmoshouse.com/satila/

翻訳ソフトについては、仕事に役立てることができる実践的な講座を近日中に開講する予定です。翻訳ソフトをマスターしたら、次の段階は翻訳メモリー ツールとの連携です。翻訳ソフト実践講座は、そのための基礎となります。

今回のトピックは、皆さんのリクエストに応じて選びました。今後も読者の皆さんの「知りたいこと」についてご紹介できればと思いますので、ぜひ以下のアンケートでご希望やご感想をお寄せください!