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  ■講師 山本ゆうじ

言語・翻訳コンサルタント。国際学校UWCイギリス校で学び、筑波大学を経て、シカゴ大学人文学修士号を取得。帰国後、フリーランスの実務翻訳者として独立。緻密な合理化ワークフローにより、実務翻訳業務、また大規模翻訳・文書管理/作成の講習やコンサルティングを行う。近著にグローバル・スタンダードの教育を紹介し、日本の教育を問い直す『世界に通じる学校・国際学校UWCの異文化理解教育』など。現在、『通訳・翻訳ジャーナル』に、翻訳者を対象としたツール使いこなしについての「デジタル翻訳者の道具箱」を連載中。
「秋桜舎」のウェブサイトは、http://transpc.cosmoshouse.com/
ブログも開設中。http://cosmoshouse.air-nifty.com/


第13回 こんなこともできる! 翻訳メモリー ツールの活用1

ユーザー辞書仕様UTXの現状

 まず、UTX形式の辞書の進展についてお知らせです。このコラムでも以前にご紹介しましたが、私はAAMT(アジア太平洋機械翻訳協会)でユーザー辞書仕様UTXの策定にかかわっています。UTX形式の辞書が広まれば、専門的な用語を、「翻訳知識」として簡単に共有し、再利用できるようになります。現在、AAMTでは、簡便なUTX-Simple形式を通じて、翻訳ソフト各社が作成した辞書を交換して使用するという実証実験を行っています。この実験の結果については情報通信研究機構のFrancis Bondさんにより、今年の夏にハワイで開催されるAMTA(Association for Machine Translation in the Americas)の会議で、発表される予定です。
 Bondさんのご協力により、UTX-Simple形式の言語学関連の英日・日英辞書がすでに公開されています。UTX-Simpleを翻訳ソフト各社の辞書形式に変換するツールはまだありませんが、これ以上はないというほどシンプルなタブ区切りテキスト形式(表)なので、簡単な変換作業だけで、メーカーを問わず、翻訳ソフトに組み込んですぐに使うことができます。

表・UTXの例
#UTX-S 0.91; ja-JP/en-US; 2008-04-17; copyright: AAMT (2008); license: CC-by 3.0
#src tgt src:pos
一語一義 one word, one meaning noun
音引き prolonged sound mark noun
共有化・標準化ワーキンググループ Sharing/Standardization
Working Group
noun
公式辞書 official dictionary noun
作成 building noun
作成する build verb


 
翻訳メモリー ツールで何ができるのか

 「仕事で必要な翻訳作業がどのようにされているか」という簡単なアンケートを取ってみました。その結果、「独学だけど自分でもできる」と考える人がかなり多いようで、「プロに任せる」という人の数をわずかに上回るほどでした。「仕事で必要な翻訳」といってもさまざまでしょうが、翻訳で必要とされる品質には甘いのかもしれません。事実、著名な外資企業であっても、ウェブやパンフレットで珍妙な日本語を平気でさらしていることが多いものです。かくいう私も終わりのない日本語修行に精進を続けている最中ではありますが……。
 さて、翻訳のプロが使う翻訳支援ツールには、翻訳を正確かつ楽に行うための実にさまざまな機能が備わっています。「購入したけれど使いこなせていない」という方もいるかもしれません。今回から数回にわたって、つまるところ「翻訳メモリー ツールで何ができるのか」ということについて、すなわち「用途」の面からSDL TRADOSを中心にご紹介(復習)します。



訳文を再利用する

 翻訳メモリー ツールの最大の機能は、「訳文を再利用する」ということです。訳文を再利用することで、翻訳作業の労力を減らす(コストを減らす)ことができるだけでなく、正確で統一感のある文書にすることができます。分量の少ない翻訳ならともかく、企業で使われる文書では、用語や表現が統一されていることが重要です。
 翻訳メモリーでの「訳文の再利用」は当たり前のようかもしれませんが、正しく実践されていないことも多々あります。SDL TRADOSでは、どう訳していいか分からない言葉があれば、訳語検索(コンコーダンス機能)を積極的に使って、以前の訳語を確認し、用語や表現を統一しましょう。Workbench上で選択した語句を右クリックして、[訳語検索]を選択します(図1)。

 図1 Workbenchからの訳語検索
図1  Workbenchからの訳語検索


翻訳済みの文書から翻訳メモリーを作る


 通常、翻訳メモリーは、翻訳メモリー ツールを使いながら徐々に蓄積されてゆきます。翻訳メモリーを使いはじめたばかりのときには、まだ再利用できる蓄積がないので、便利さが感じられないことがあります。しかし、原文と、それに対応する訳文さえあれば、翻訳メモリーを作り出すこともできます。SDL TRADOSに含まれるWinAlignというツールを使えば、原文と訳文の整合を行うことができます。原文文書Aから訳文文書Bが作られたということは分かっていても、それぞれの文書内でどの原文センテンスがどの訳文センテンスに対応するかは分かりません。文の順序が前後入れ替わっていたり、原文文書には存在しない文が、訳文文書に補足説明として付け加わっていたりすることもあります。WinAlignのような整合ツールは、原文と訳文の対応関係を確認し、ペアを作って、翻訳メモリーとして使えるようにします。
 これと似たような整合作業を行うツールは、一部の業務用翻訳ソフトにも存在します。しかし実際の翻訳業務を考えると、WinAlignのほうが高機能です。WinAlignでは、文書内のタグや書式を手がかりにして、より正確な対応付けをすることができます(図2)。

図2 WinAlignの設定

図2  WinAlignの設定

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