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  ■講師 山本ゆうじ

言語・翻訳コンサルタント。国際学校UWCイギリス校で学び、筑波大学を経て、シカゴ大学人文学修士号を取得。帰国後、フリーランスの実務翻訳者として独立。緻密な合理化ワークフローにより、実務翻訳業務、また大規模翻訳・文書管理/作成の講習やコンサルティングを行う。近著にグローバル・スタンダードの教育を紹介し、日本の教育を問い直す『世界に通じる学校・国際学校UWCの異文化理解教育』など。現在、『通訳・翻訳ジャーナル』に、翻訳者を対象としたツール使いこなしについての「デジタル翻訳者の道具箱」を連載中。
「秋桜舎」のウェブサイトは、http://transpc.cosmoshouse.com/
ブログも開設中。http://cosmoshouse.air-nifty.com/


第14回 翻訳メモリー ツールの活用2
書式の再現、用語管理ツールMultiTerm

 拙作の掌篇が、光文社文庫『奇妙にこわい話』コンテストで佳作を頂きました。2008年7月10日刊行の、『もちろん奇妙にこわい話』(光文社)に収録されます。創作、特に字数制限の厳しい掌篇やショートショートは、日本語力を鍛えるには最高の訓練です。訳文の推敲作業を楽しめる方なら、気晴らしもかねて創作に挑戦してみるとよいのではないでしょうか。

 さて、今回は翻訳メモリー ツールの活用の2回目です。書式の再現、用語管理ツールMultiTermについてご紹介します。

原文の書式を再現する

 翻訳メモリー ツールは、原文の書式を訳文でそのまま再現するのにも役立ちます。翻訳する原文が、書式のないテキスト形式なら、書式を気にすることはありません。しかし、企業で使われるさまざまな文書やウェブサイトでは、読みやすく、また読者にインパクトを与えるために、文字の色、フォントの種類やサイズ、ハイパーリンクなど、さまざまな書式が使われています。
 
  書式のない状態で翻訳した後で、このような書式をすべて手作業でつけ直すのは大変です。翻訳メモリーを使うことで、原文の書式を保ったまま翻訳することができます。




 上図のように、原文の書式情報は、翻訳メモリー ツール上では「タグ」として表現されます。このようなタグは厄介なものと思われることもありますが、翻訳者にとっては正確に翻訳するための助けにもなります。前回ご説明したWinAlignと同じように、書式は、原文と訳文、特に単語の対応関係や、特定部分の意味を知る手がかりとなるからです。太字や斜体になっている情報が、単なる「強調」という以上に重要な意味を持つこともあります。書式を単に余計な情報とみるか、役立つ情報とみるかは、翻訳者の技能しだいです。
 
  SDL TRADOSでは、書式を含むさまざまな形式の文書をXML形式に変換することで扱えるようにしています。XMLの基礎知識を身につけると仕事におおいに役立つはずです。XML入門はウェブ上にたくさんありますが、比較的分かりやすく説明しているところをご紹介します。

  参考サイト:たのしいXML
 
  残念ながら翻訳ソフトでは、Wordなどよく使われる文書形式の書式情報を訳文に反映できる製品もありますが、「管理」することまではできません。そのため、翻訳する過程で一部または全部の書式情報が抜け落ちることがあります。文全体が大文字など、比較的単純な書式ではそれでもなんとかなることもあります。しかし、数百ページ以上の分量や、複雑な書式が大量に使われている場合には、「書式を管理する仕組み」、すなわち翻訳メモリー ツールが必須になります。
 
用語を検索する

 SDL TRADOSでは、事前に用語集を作成しておくと、翻訳中に簡単に用語を確認できます。翻訳メモリー ツールでは、用語集は「用語ベース」というデータベースで管理します。
 
  以下は、Workbenchでtarget languageという用語が用語集(用語ベース)で見つかったことを示しています。
 


図1  Workbenchからの訳語検索


 用語ベースに存在する用語は、単語の上の赤い線で示されています。それぞれをクリックするだけで、ここに用語集での結果が表示されます。この機能を自動用語認識と呼びます。この自動用語認識のおかげで、一つ一つの単語を調べなくても、クリックするだけで正しい訳語を確認できます。この例のように多数の用語が使われる翻訳プロジェクトでは、用語集は必須です。
 
  用語管理ツールMultiTermで、以下のように用語を直接検索することもできます。


図1  Workbenchからの訳語検索


 辞書引きソフトと同じように、調べたい単語(ここでは"spell")を入力して検索できます。「あいまい検索」がオンになっているので、spellという文字列を含むさまざまな語が左下の検索結果に表示されています。
 
  実際に使われる用語では多かれ少なかれ、表記のゆれが必ず発生します。あらかじめすべての表記のゆれを予測して、それらに対応した用語集を作るのは大変です。こんな場合にはあいまい検索が非常に役立ちます。あいまい検索では、大文字小文字、複数形、スペルミス、語の間の空白の有無など、わずかな違いがあっても目的の単語を検索できます。
 
  よくExcelで用語管理をしている人がいます。しかし、Excelはもともと文章を扱うようにはできておらず、あいまい検索はできません。またWordにはあいまい検索機能はありますが、特定の決まった形しか扱えません。そのため、調べる手間が掛かるだけでなく、見落とし、チェックもれが多数発生します。MultiTermを使えば、予想外のずれでも確実に検索することができるので、調べる手間を減らし、間違いを防ぐことができるのです。また、MultiTermでは、複数の用語ベース(用語集)を一度に検索することもできます。
 
  MultiTermの動画デモを新たに作成しましたので、こちらもぜひご覧ください。

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