日中・中日翻訳ソフトj・北京V6
北京オリンピックは終わりましたが、中国は引き続きさまざまな面で注目を集めており、私の知り合いでも中国語を勉強している人は相当いるようです。私自身の中国語能力は簡単な旅行会話ができる程度ですが、少しずつ学び続けています。
j・北京V6(ジェイ・ペキンV6)は、高電社の日中・中日翻訳ソフトです。このたび最上位バージョンである「j・北京V6プロフェッショナル with ChineseWriter9」をお借りできたので、ご紹介します。
対訳エディタ
j・北京V6では、その他の翻訳ソフトと同様に、まとまった文章は対訳エディタを使って翻訳します。
図 1 j・北京対訳エディタ
図1は日中翻訳の例です。左側の日本語の原文、中央の中国語の訳文に加え、右側に「第三面」と呼ばれる画面が表示されています。この第三面はさまざまな機能を切り替えて使うことができ、ピンインやカタカナによる発音の表示、簡体字もしくは繁体字による別表記の表示などができます。ここでは、もう一度日本語に自動翻訳して正しく訳されているか確認する「確認翻訳」を行っています。訳文言語をよく知らない場合でも、確認翻訳をすることにより、意思疎通のための「概訳」は十分できるわけです。
単語をダブルクリックすると、それぞれの画面で対応する単語が強調表示されます。ここでは日本語の「生徒」が「学生」と翻訳されていることが分かります。左端の番号で示される1、2、3の3つの原文がありますが、より正しく訳されるよう上から順に、少しずつ書き換えています。明らかに解釈が間違っている場合は、問題の訳語をダブルクリックして確認し、より直接的で簡単な表現に書き換えることで正確に翻訳できます。3つめの原文では、確認翻訳でもほぼ正しい訳になっています。
なお、今回の例文は日中青年会議のサイトから取っています。日中青年会議は、日本と中国の高校生の異文化交流イベントで、2009年にUWC(United World Colleges)香港校で開催されます。
中国については、知っているようで知らないことが多くあるとしばしば感じます。特に若い世代の人たちが互いの文化や歴史についての理解を深める、このようなイベントが今後も増えてゆくことが非常に重要だと思います。このようなイベントで翻訳ソフトが言葉の壁を破るのを見ることができれば、興味深くもあり、またうれしいことです。
翻訳の精度
「無料の翻訳サイトがあるから翻訳ソフトはいらない」と思われている方もいらっしゃるでしょう。j・北京V6とGoogle翻訳での中日翻訳の結果を比較してみました。その結果、明らかにj・北京V6の訳文の方が優れていました。Google翻訳では、単語レベルでの置き換えは部分的にできていましたが、文としてはまったく理解不能な結果でした。これに対して、j・北京V6では、意味が通じる訳文が得られました。「自然な日本語」とはいえないまでも、意味を理解するためには十分実用的であるといえます。プロの中国語翻訳者のための「翻訳支援用途」としても、ユーザー辞書の調整を進めることにより、下訳として活用できると思います。
読み上げ機能
漢字そのものはともかくとしても、日本人の中国語学習者にとっては中国語の発音を覚えることは重要な課題です。j・北京V6には、日本語と中国語の高品質な音声合成ソフトも含まれています(図 2)。対訳エディタの翻訳結果、辞書、「中国語ヒアリングレッスン」という例文集などをはじめ、あらゆるソフトで読み上げてくれます。
音声合成というと「ロボットのような声」をイメージするかもしれませんが、最近の音声合成は人間の話す声に非常に近づいています。付属する辞書には人間が読み上げた音声データもありますが、合成音声も明快で聞き取りやすい発音で読み上げてくれます。
また、私はこの記事を含めて執筆した文章は、パソコンに読み上げさせて耳で聞いて確認する「音声校正」を行っています。翻訳された日本語を耳で確認することで間違いを発見し、自然な訳文にすることができます。
図2 中国語ヒアリングレッスン
この音声合成により中国語の文章を読み上げた結果を、iPodなどのオーディオプレーヤーに転送することもできます。この時にテキストも同時に転送されるため、聞き取れなかった場合でも文字で確認することができます。
中国語フォント、辞書、学習支援機能など
「j・北京V6 プロフェッショナルwith ChineseWriter9」には、翻訳ソフトそのものの機能に加えて、翻訳作業や中国語の学習を支援するための充実した機能があります。
ChineseWriter9は「中国語統合ソフトウェア」という位置付けです。中国語の入力をはじめとして、中国語に関係する多彩なツールが含まれます。日本語とは異なる、中国語の複数の文字コードや字体の変換も簡単に行えます。
中国語自体には、簡体字と繁体字の字体の違い以外にも、いくつかの種類がありますが、ChineseWriter9ではそれぞれについて複数の中国語入力システムが用意されています(図 3)。さらに北京語に加えて広東語の入力もサポートしています。
図3 中国語入力システム

また中国語デジタルマルチ大辞典(小学館日中・中日辞典、大修館中日大辞典、ビジネス用語・パソコン用語辞典など)の辞典(図 4)、メールやビジネス会話の文例集なども充実しています。中国語をマスターした人が活用できるのももちろんですが、中国語の技能をさらに伸ばしたいという学習者を支援するための機能も豊富に備わっています。
図4 中国語デジタルマルチ大辞典

さらに中国語フォントとして、簡体字と繁体字を含む、50種類以上ものフォントが付属しています(図 5)。この中で特に興味深いのはピンイン付きのフォントです。つまり漢字のそれぞれに発音が併記された字体です。Wordなどに貼り付け、簡体字などからピンイン付きフォントに変更すればすぐに発音が分かります。これも中国語の発音を学ぶ上で非常に役立ちます。
図 5 中国語フォントの例

この他に中国語OCRソフトChinaScan4も付属しており、紙の中国語文書も電子化することで、翻訳ソフトや読み上げが使えるようになります。
まとめ
ソフトを使ってみた全体的な感想は、中国語の初心者から上級者まですぐに使える機能が充実しており、実用性が高いと感じました。上級者が翻訳支援用途に使うにはさらに辞書のチューニングが必要になりますが、これはどの翻訳ソフトにも言えることです。英語については徐々に翻訳の語句や表現の用例が蓄積されてきていますが、今後、中国語についても翻訳業界全体で翻訳知識が蓄積・再利用されることで、翻訳ソフトの有用性はさらに高まるものと思われます。
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