「良い訳」と「問題がない訳」
明けましておめでとうございます。今年はいろいろと厳しい年になると予測されていますが、皆様にとって実り多い年になることをお祈りいたします。今年から翻訳の仕事に挑戦する、という方もいらっしゃるかもしれませんね。ジェスコーポレーションの、翻訳業界の業界用語集に、技術翻訳をはじめとする、翻訳に関連する用語がまとめられています。翻訳業界でどのような知識が求められているかを確認することができます。
私は、ここしばらくアルコール依存症関連の翻訳をしています。カウンセリングのマニュアルで、書籍に近い体裁です。ボランティアで翻訳された方による下訳があるのですが、用語や表記の統一が大変です。翻訳プロジェクトは最初から計画的に実施しない
と、再調整に時間がかかるということを再確認しました。その後、用語集を整備し、秋桜舎の体系的な翻訳支援技術を投入した結果、「作業の効率が数割向上した」とクライアントの方に喜んでいただけました。
さて新年にあたり、基本に返って、「良い訳」とは何かということを考えてみます。「良い訳」は、さまざまな要素を持っています。実務翻訳の仕事の観点からは、「クライアントが求める翻訳」が「良い訳」ともいえます。つまりクライアントを満足させられる、ということです。しかし、翻訳者自身の観点からも「良い訳とは何か」ということを考える必要があります。そのために「良い訳」と「問題がない訳」を区別して考えるのがよいでしょう。「問題がない訳」はマイナスになる要素がない訳、「良い訳」とはプラスの要素がある訳です。「問題がない訳」とは、たとえば以下のような訳です。
* スタイル ガイドと用語集に従っている(訳語、表記、文体が統一されていることが前提)
* 誤りがない(原文の解釈、誤字脱字、「てにをは」などについて)
* 訳抜けがない
* 解釈があいまいでない(修飾関係など)
さらに納品物としては「適切なファイル形式である」ということも求められます。これは、訳文ファイルが問題なく開ける、またXMLやHTMLなどのタグ付き文書の構造が正しい、といったことです。逆に「問題がある訳」とは、そのままでは納品物として納品できない重大な欠陥がある訳ということになります。
一方で、「良い訳」は、たとえば以下のような翻訳です。
* 読みやすい
* 宣伝文の場合、文学的要素がある場合は、文体に美しさや個性がある
これは目安で、絶対的な区別ではなく、クライアントや翻訳内容によって優先順位は変わります。ここで「良い訳」を心がけるのはもちろんですが、実務翻訳では「問題がない訳」にするのが先決でしょう。いくら読みやすい訳でも、解釈を間違えていたり、必要な部分を訳していなかったりすると意味がありません。もちろん「読みやすさ」については、明らかに誤解を招くような理解しにくい文章は、「問題がある訳」です。
「問題がない訳」にするためには、ツールをうまく使うことです。たとえば、Wordの文章校正機能を活用して、「問題がない訳」にするのに役立てることができます。以下の例では、赤の波線(スペルチェック)で入力ミスが指摘されています。右クリックして修正することができます。

以下の例では、緑の波線(文法チェック)で助詞の誤りが指摘されています。[この文について]をクリックすると、指摘の理由が表示されます。

「スタイル ガイドと用語集に従っている」かは、目で見て確認するだけでは不十分です。目で見ただけでは必ず見落としが発生します。Wordの置換機能や拙作のWordマクロ「換の玉」などを使ってすばやく確認・修正することができます。また翻訳ソフトを活用すれば、たとえば原文の"at least"と"at last"を読み違えてもすぐに気づいたり、訳抜けを防いだりすることができます。
ツールは、実際に少しずつ練習して使い方を覚えることで使いこなせるようになります。
今年もさまざまなツールの使いこなしをご紹介してゆきますので、ぜひ実際に試してみてください!
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