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  ■講師 山本ゆうじ

言語・翻訳コンサルタント。国際学校UWCイギリス校で学び、筑波大学を経て、シカゴ大学人文学修士号を取得。帰国後、フリーランスの実務翻訳者として独立。緻密な合理化ワークフローにより、実務翻訳業務、また大規模翻訳・文書管理/作成の講習やコンサルティングを行う。近著にグローバル・スタンダードの教育を紹介し、日本の教育を問い直す『世界に通じる学校・国際学校UWCの異文化理解教育』など。現在、『通訳・翻訳ジャーナル』に、翻訳者を対象としたツール使いこなしについての「デジタル翻訳者の道具箱」を連載中。
「秋桜舎」のウェブサイトは、http://transpc.cosmoshouse.com/
ブログも開設中。http://cosmoshouse.air-nifty.com/


第23回 無料の翻訳メモリー ツールOmegaT


オープンソースの翻訳メモリー ツールOmegaT


今回は、翻訳メモリー ツールOmegaTをご紹介します。OmegaTはオープンソースのソフトウェアであり、無料で利用できるのが大きな特長です。「翻訳メモリーって高そう」「どんなものかまず試してみたい」という方には最適です。OmegaTのもう一つの特長は、MacやLinuxにも対応していることです。

OmegaTはこちらからダウンロードできます。このサイトには日本語の説明はありませんが、OmegaT自体は、日本語を含め各国語のインターフェースで使用することができます。毎月数千件ダウンロードされており、注目されているといえそうです。

OmegaTを使用するには、OmegaT本体に加えてJava Runtime Environment (JRE)というモジュールが必要です。JREがインストールされていなければ、上記サイトでJREを含むパッケージを選んでダウンロードし、インストールします。



作業の流れ

OmegaTでの作業の流れは以下のようになります。

1. プロジェクトを作成し、翻訳する原文をプロジェクトに追加する
2. 翻訳する
3. 訳文を生成する

翻訳メモリーの基本は「以前に訳した訳文を再利用する」ということです。この考え方を知っていれば、簡単に使うことができます。

OmegaTでは、オープンなTMX形式を使用しています。手持ちの翻訳メモリーがあれば、TMXに変換して使うことができます。SDL Tradosでは、WorkbenchからTMXにエクスポートできます。

翻訳対象の文書形式としては、プレーン テキストのほか、HTML、Word 2007(docx)、・Excel 2007(xlsx)・ PowerPoint 2007(pptx)などOffice 2007 文書形式、OpenOfficeのODF形式などにも対応しています。ただしWord 2003以前の、doc形式のWord文書には対応していないので、Word 2003以前しかなければ、Word 2007形式で保存するアドインODF変換アドインを使います。


実際の操作

以下がOmegaTの実際の画面です。左に翻訳対象、右上に翻訳メモリー内に一致した文が表示されます。

OmegaT
今は、4番目の分節(ひとつの文の区切り)を翻訳しているところです。「どの文をどう訳したか」確認するために、[表示]メニューから[原文表示]オプションをオンにすることをお勧めします。ここでは、[翻訳済み分節を色づけ]もオンにしています。

タグを含む文書では、外部タグ、つまり「文全体を囲むタグ」は、Trados同様に意識する必要はありません。ただ残念ながら、OmegaTでは、内部タグがTradosのようなまとまった形ではなく、<w0><w1><w2>……のようにテキストと同じ扱いになります。目で見て対応関係が把握しづらく、タグを誤って壊す可能性があります。タグを含まないプレーン テキストの原文であればスムーズに翻訳できるでしょう。

翻訳中に、用語集に含まれる用語を参照することもできます。ここではproductという語の用語が、右下の用語集に表示されています。用語集は、大文字小文字の変化は同一語とみなしますが、ファジーマッチ機能はありません。なお用語標準仕様UTXの辞書・用語集も、拡張子をutf8に変更するだけでOmegaTから用語集として参照することができます。

協力者の輪

香川県で活躍されている翻訳者で、OmegaTプロジェクトの主要メンバーの一人、エラリー ジャンクリストフさんにお話を伺ってみました。「使用者も開発者もプロの翻訳者で、自分たちのニーズに合うソフトとして作っています。サポートは、日常的にOmegaTを使っている翻訳者によって、日本語でもその他の言語でも行われています」とのことです。

公式のSDL Trados認定コースの講師で、Tradosの動画デモを多数作っている私が、なぜOmegaTを応援しているのでしょうか。Linux系のオープンソースの翻訳では、プロの翻訳者がかかわることは少なく、ボランティアがいまだに手作業で翻訳をすることがほとんどです。翻訳工程でパソコンの能力を活用しようという発想がないのです。そのため、残念ながら翻訳の品質には重大な課題があります。確かにボランティアは重要であり、増えるといいのですが、一方で「翻訳なんてだれにでもできる」という考えは不幸な誤解です。翻訳を専門的に学ぶとともに、もっと翻訳メモリーを活用して、体系的に翻訳プロジェクトを行うことで、時間と労力が減らせ、品質が高められることをぜひ理解していただきたいものです。OmegaTは、そのために非常に役立つはずです。国や地方自治体や大手のIT企業が、もっと積極的にオープンソース翻訳を支援すればいいのですが……。

OmegaTについて、ヘルプやネットで調べても自己解決できない点がある場合は、約1000名の参加者がいるOmegaTメーリング リストに参加することでヒントが得られます。

OmegaTのようなオープンソースのソフトウェアは、自主的な協力者によって支えられています。マニュアルやその翻訳を含め、開発はすべてボランティアで行われています。市販のソフトとは異なる点に戸惑うことがあるかもしれませんが、OmegaTの意義に賛同される方は協力されてはいかがでしょうか。「自分が協力したソフト」を仕事で使う満足感は、一味違うものがあるはずです。OmegaTのヘルプの、「取扱説明ガイド」に詳細が説明されています。
 

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