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  ■講師 山本ゆうじ

言語・翻訳コンサルタント。国際学校UWCイギリス校で学び、筑波大学を経て、シカゴ大学人文学修士号を取得。帰国後、フリーランスの実務翻訳者として独立。緻密な合理化ワークフローにより、実務翻訳業務、また大規模翻訳・文書管理/作成の講習やコンサルティングを行う。近著にグローバル・スタンダードの教育を紹介し、日本の教育を問い直す『世界に通じる学校・国際学校UWCの異文化理解教育』など。現在、『通訳・翻訳ジャーナル』に、翻訳者を対象としたツール使いこなしについての「デジタル翻訳者の道具箱」を連載中。
「秋桜舎」のウェブサイトは、http://transpc.cosmoshouse.com/
ブログも開設中。http://cosmoshouse.air-nifty.com/


第24回  ネット辞書・辞典の活用


今回は、ネット上で利用できる辞書・辞典の活用と注意点をご紹介します。

 

新聞はネットに押されて苦戦していますが、既存の紙メディアに限らず、情報収集に関する情勢は変化を続けています。マイクロソフトの百科事典ソフト、エンカルタは今年で販売を終了するようです。

 

ネットの辞書・辞典は無料のものも多いのですが、他の辞書と同時に検索(串刺し検索)することができないのが欠点です。よく使う辞書で、英辞郎のように、パソコン用辞書の形態としてデータを販売している場合は、そちらを入手して串刺し検索できるようにしたほうがよいでしょう。

 

一方でネットの辞書・事典では、最新の情報が載っているという利点もあります。Department of Homeland Security (DHS)というアメリカ政府の組織は、テロリストものの海外ドラマではよく出てきますが、よほど最近に出た紙の辞典や辞書でないと載っていません。9/11のテロの後、2002年に作られた組織だからです。今回ご紹介する辞書・事典で「DHS」を引いてみると、情報の新鮮度や量を比較できます。


辞典 「DHS」を検索した結果
 Yahoo! 百科事典  項目なし
 kotobank  知恵蔵2009に項目あり(「国土安全保障省」として)
 英辞郎  項目あり
 Wikipedia  項目あり(信頼度は不明だが、かなり詳細)


百科事典


百科事典は、自分が不慣れな分野の基礎知識を確認するのに役立ちます。翻訳を正確に行うには、対象分野の知識が必要です。責任を持って翻訳できる分野で翻訳をするのが理想ですが、いつも自分がよく知っている分野の翻訳ばかりできるとは限りません。同じ言葉でも、日本語にしたときに分野によって訳し方が違う言葉もあります。そのようなときは百科事典を使いましょう。

 

ネット上の百科事典を使えば、その分野の基礎知識に加えて、訳語の妥当性、実際の用法などを確認できます。Yahoo! 百科事典は、日本大百科全書(ニッポニカ)に基づく、無料のオンライン百科事典サービスです。 このように、執筆者と編集者が責任を持つ辞書・事典は、完ぺきではないとしても、ユーザー参加型の辞書サービスよりはいくらか信頼できます。

kotobank

kotobankは、『デジタル版日本人名大辞典+Plus』『デジタル大辞泉』『知恵蔵2009』『百科事典マイペディア』(抜粋)など、44辞書・約43万語のデータを検索、閲覧できる無料サービスです(2009年4月に開始)。ユーザー参加型ではないため、信頼はある程度あるものの、項目の充実度と新鮮さではWikipediaにかなり見劣りがします。しかし、『知恵蔵 2009』のおかげで、最近の時事用語には比較的強いようです。


英辞郎

英辞郎は、主に英語と日本語の辞書サービスで、翻訳関連以外の人にも広く使われています。かつてはユーザー参加型の辞書でしたが、現在は、ある程度監修がされています。

 

英辞郎の監修は、出版社から出されている辞書と同じではなく、各分野の専門家が確認しているとは限らないので、「英辞郎しか使わない」というのは危険です。既存の辞書にはないようなうまい訳語もしばありますが、翻訳者なら英辞郎は最後の手段として、まずは監修された辞書を引いてみましょう。

 

オンライン版は無料で使えますが、有料で辞書データを(ダウンロードもしくは書店で)購入することもできます。辞書データを入手すれば、他のパソコン辞書と同時に検索(串刺し検索)できるようになります。こうすれば他の辞書と比較できるので、お勧めです


Wikipedia

Wikipediaは、ユーザー参加型の辞書サービスです。情報量が豊富であり、参考、調べものの出発点にはなります。情報量の豊富さでは、監修された辞典を上回っていることもしばしばあります。しかし、だれでも編集できるので、なんの裏付けもない個人の趣味、断定、思い込みもそのまま載っています。厳密さを問われない場合は、参考資料として示すことはできますが「典拠」としてのWikipediaの信頼性はゼロです。悪意のある改竄がしばしば行われていることも考えると「マイナス」であるとさえいえます。つまり、Wikipediaで示された情報を何らかの典拠として使う場合は、本来の情報源に必ずさかのぼって確認する必要があります。この点に常に注意して使えば役立つはずです。

 

翻訳者なら、ぜひ英語版のWikipediaを積極的に活用してみましょう。特に英語圏に関する項目では、日本語版より格段に情報が充実しています。画面の左側に、現在表示されている項目の各国語版へのリンクがあります。



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